1993斑尾とトム・ハレル/ジ・アート・オブ・リズム2006/07/30 21:54

madarao & tom
Newport Jazz Festival in 斑尾
「真夏の夜のJazz」で有名な、1954年から続くジャズフェスを、1982年から信州斑尾高原へもってきたものです。
私は1988年より毎年訪れてますが、
1992年、事情により行けなかったとき、友人から
「今年は変なやつが出てたぞ」という話を聞きました。
「演奏中は自分のソロが来るまでじっと下を向いたまま、ちょっと危なそうだった」
演奏は?と聴くと、意外といい!という、なんとも訳の分からない返事。
まっどうせ見れなかったんだから、とういことで1年が過ぎ、迎えた1993年。
あいつだー!
ジョンファディスとともにマダラオオールスターズとしてステージ中央に
ちょっとい大きめなトランペット(フリューゲルホーン)を持ったまま、
下を見たまま動かない、奇妙なやつ!
トム・ハレル!
衝撃的な出会いでございました。
こいつかー、たしかに変なやつ。見た感じはほんと近寄りたくないタイプのかたです。
やはり、精神の障害がある方らしく、一種独特の雰囲気を醸し出してました。
ジョンファディスが散々超ハイトーンでハイテンションなパフォーマンスで
晴れ渡った斑尾高原を大いにわかせた後、
さーきました。彼、トムハレルのソロです。
あったかみのある深い味わいのフリューゲルホーンから出される魔法のような、
不思議な魅力的なフレーズが目の前で踊りだしました。
うおおおおおっ、ななななんなんだーーーー!
けっして派手さはないものの、ズルズルとトムワールドに開場全体が吸い込まれて行く瞬間でした。
見た感じはどうしても、危ない、視点が合ってない、放心状態のMr.ビーンのようですが、
出てくるフレーズのなんと魂の入った美しいそして力強い音なんでしょう。
音が生きてるってこのことなんだと、認識しました。
ソロ以外はまた静かに下を向いてじっと動かず、動いたかなと思ったら、
下向いたままホーンを口に当てたまま腕を激しく上下させ、いったいなにしてんだろ、つばでもとってんのかな、
ほとんどスケベ行動のようにしか見えないその動きは、やはり危険がいっぱいであやしい。
そのかくトムの存在が気になって気になって、トムの音が気になって、気になってしょうがないステージでした。
世界には色んな人がいるんですね、特に芸術家には…。
斑尾で体験してからしばらくしてこのCDを見つけました。偶然です。
だいたいCDやさんに「トム・ハレル」なんてコーナーはあるはずも無く、
本当偶然に見つけました。
全体に中南米タッチの音、曲が多く、ジャズの枠を軽く超えてしまった感じを受けます。
音楽というより、トムがパステルか水彩かなんかでクロッキー、スケッチしている感じでしょうか。
肩凝る感じはなくリラックスしてますが、結構楽曲的に凝ったアレンジが随所にみられ、
飽きのこないスリル感も得ることが出来ます。
3はジョシュア・レッドマンの実父デューイ・レッドマンがテナーで、
6はマイクスターンがギターでと共演者もすごい。
奇人変人っぽい印象しか書いてませんが、単純にポップなものではないにしても、
奇妙さや、難しさを感じない、聴きやすさを持ってます。
ボサノバ調のギターがはいったり、パーカッションが効果的なので、ちょうどいい重さ(軽さ)になってます。
トムさま、あんたは凄い!
たぶんこのような我々の思いは届きそうにないですが、
マイペースで人間の創造の極地を開拓して行ってください。
8月第一週末…
ことしも斑尾はただの伝説話だけのようです。

Tom Harrell/The Art Rhythm BMG 1998 BVCJ-656(09026-68924-2)
1.RETALS DANSE
2.MADRID
3.OASIS
4.CARIBE
5.DOO BOP
6.EXIT IN
7.RECITATION
8.LAS ALMAS
9.CINCO QUATRO
10.SAMBA DO AMOR